ご案内
業態を決定する要素を整理すると、次のようになる。
WHAT(何を)業種および主力商品WHY(何のために)お客の利用動機WHO(だれに)主要客層WHEN(いつ)営業時間およびお客の主な利用時間WHERE(どこで)出店立地HOW(どのように)売り方のスタイル、お客にとっては楽しみ方のスタイルHOWMUCH(いくらで)価格設定これらの要素を私は、飲食店の5W2Hと呼んでいる。
いいかえれば、お店のコンセプトの構成要素ということになる。
ではどうして、これらの要素が大事なのか。
たとえばWHAT=商品について考えよう。
ラーメン店をやるのだから、商品はラーメンに決まっているじゃないか、と思う人もいるだろう。
それだけではどんなラーメン店になるのか、まったくわからない。
麺はどういう麺にするのか、スープはどうなのか、チャーシューは、などなど、ラーメンという商品自体が、さまざまな要素の組み合わせから決定されるのだ。
札幌ラーメンとか東京ラーメンとか九州ラーメンという大分類はあるが、そういう漠然としたイメージのままでは自店の商品にならないのである。
いや、とりあえず商品はできるかもしれないが、お客を取り込むパワーは持ち得ない。
また、ひと口にラーメン店といっても、お店によって品揃えはかなり違う。
醤油ラーメン一品目だけで勝負しているお店もあるし、醤油、味噌、塩などスープのバリエーションを持っているお店もある。
麺にのせる具材でメニュー.バリエーションを展開しているお店もあれば、坦々麺や広東麺、什錦湯麺といった本格的な中華麺を主力にしているお店もある。
妙麺や冷麺についてもしかりである。
さらに、ギョーザやチャーハン、炒めものといった料理メニューを持つかどうかによっても、メニュー構成はガラリと変わる。
商品でもうひとつ肝心なのが価格=HOWMUCHである。
じつは価格政策は、業態の構成要素のうちもっとも大事なのだ。
いくらで売るかということは、お客の側からいえば「いくらで買うか」ということ。
お客にとっての最大の関心事である。
ふつう外食でお店を選ぶときの最大の決定ポイントは、価格である。
価格=予算を決定するのは利用動機=WHYである。
忙しく簡単に済ませたいからラーメン店に入るのか、それともおいしいラーメンを食べたいと思っているのか。
お客の判断はその利用動機によってかなり変わってくる。
また、ビールとギョーザを楽しんでからラーメンを食べたい、というお客にとっては、HOW=売り方のスタイルも重要な要素になるだろう。
このように、すべての飲食店は何らかの業態によって成立している。
もちろん、自店の業態ということなどまるで意識していないお店もたくさんあるわけだが、その場合、よほどの商品力がなければ成功はできない。
なぜなら、お客にとっては業種よりも業態が大切だからである。
たとえば、小腹を満たすのにはラーメンでなく手近にあるハンバーガーでもかまわないわけだし、ビールを楽しみたいのなら居酒屋に行ってもいいのである。
いいかえれば、競合店というのは必ずしも同じ業種のお店ではない、ということになる。
商圏内の同業態のお店はすべて、競合店になる。
このことも強調しておきたい。
これで業態ということの意味は大体つかめたと思う。
そこで改めて、外食事情を観察してみよう。
業種にとらわれずに、あくまで業態という枠組みでお店を見るのである。
そうすると、飲食業界全体の大きな流れが自然と見えてくるはずだ。
結論からいえば、派手な外見でお客を集める時代は終わったということだ。
バブル崩壊後、消費者の低価格志向が取り沙汰されているが、消費者は別にケチになったわけではない。
ムダづかいをしなくなったというだけで、外食はちゃんと楽しんでいる。
不振店はすぐに景気のせいにしたがるが、繁盛できないのはお客がいなくなったからなどではない。
要するに、お客の変化が見えないお店が、取り残されているだけなのだ。
いまのお客の低価格志向は、実質重視主義になったことを示している。
何が、本当にお値打ちがあるのかということを、見抜く目を養ってきたということでもある。
バブルの前後にかけて、外食企業はこぞって華やかなお店づくりを競っていた。
店舗規模も大きく、いわばデコレーションで飾り立てたケーキのような売り方が主流だった。
毎日毎日がハレの日のような、現実離れした利用動機をひたすら追いかけていた。
一億総グルメを経験し、外食体験を豊富に積んだお客は、そういう虚飾には目を向けなくなっている。
つまり実質重視主義である。
断言してもいい。
ムダなお金をつかわずに外食を楽しみたい。
いまの、これからのお客の動向である。
外食に限らず、世の中の大きな流れといってもいい。
こういう時代背景のなかで改めてクローズアップされてきたのが、ほかならないラーメン店なのである。
もちろん、ラーメン店にもいろいろな業態がある。
300円台のラーメンもあれば、1000円を超える価格設定で繁盛しているラーメン店もある。
他の飲食業種の価格設定と比べてみればわかることだが、基本的には時代のお値打ち感にマッチした値づけである。
しかも、投資額のかからない小規模店で、坪効率の高い商売をすることができる。
そのためには、業態発想をしっかり持つことだ。
ラーメン店のビジネスとしての最大の特徴は素人でもすぐに取り組める、ということだ。
いまはラーメン店以外でも、素人が参入しやすい業種はたくさんある時代だが、こと調理技術という点では、ラーメン店がもっとも簡単な業種といえる。
何が簡単なのかというと、技術はあるていど必要でも、とりあえず技能を持つ必要はないからである。
ここでいう技術とは、一定の調理作業をこなす能力のことで、技能とは要するに職人芸である。
たとえば、一般にファミリーレストランでは、厨房の現場に調理のプロは必要ない。
それでも100品目以上の商品を提供できるのは、すべての食材が最終調理をおこなうだけでよいようにセントラルキッチンで加工済みだからである。
厨房では、その食材をどう処理すればいいのかを指示するマニュアルに沿って、決められた作業をすればいいだけになっている。
だから、アルバイトだけで成り立っているのである。
では、ラーメン店はどうだろうか。
ラーメンだけを提供することを考えれば、調理作業はファミリーレストランとほとんど変わらないことに気づくはずだ。
麺は製麺業者から届けられるのだし、スープをとるといっても基本的にはむずかしい作業ではない。
コンビニエンススープだってある。
麺を茄でるのには茄で麺機があるし、ギョーザもギョーザ焼成器を使えばだれでもきれいに焼くことができる。
つまり、アルバイトだけでも十分に、一定のレベルの商品を提供することができるわけである。
もちろん、技能=職人芸を生かしたラーメン店もたくさんあるし、お店の個性化の大きな武器でもあるわけだが、とりあえずそれなしでも繁盛することが可能である。
他の業種に比べてラーメン店のフランチャイズチェーンがずっと多いのは、そのためである。
基本的なラーメン店の作業だけなら、2週間も特訓すればだれでも身につけることができる。
要するにオープンの第一歩としては、技能に近い調理技術は不要ということだ。
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